最高裁判所第二小法廷 昭和28年(し)30号 決定 1953年7月31日
申立人(弁護人)
池辺甚一郎
被告人李点祚にかかる公文書偽造被告事件について昭和二八年四月三日大阪高等裁判所のなした勾留期間更新決定に対する異議申立棄却の決定に対し、申立人から特別抗告の申立があつたので、当裁判所は左のとおり決定する。
主文
本件特別抗告を棄却する。
理由
申立人の特別抗告趣意は末尾添付の書面記載のとおりである。
論旨は要するに、刑訴三四四条の規定は同六〇条二項但書の規定を排除するものではないとの見解に立ち、控訴裁判所が被告人に対してなした第二回の勾留期間更新決定は同六〇条二項但書に違反することを主張した異議の申立に対し、原決定は右勾留期間更新決定に違法がないとしてこれを是認したことは、憲法三一条に違反するというにある。しかし前審判決により禁錮以上の刑の宣告を受けた勾留中の被告人に対しては、刑訴六〇条一項一号乃至三号に当る事由が存続し同三四三条の趣旨に従い勾留を継続する必要があると認められる限り勾留期間を更新することができるものと解するを相当とする。されば、原決定が、被告人は当該事件の第一審裁判所で懲役一年の言渡を受けて勾留中のものであり、なお被告人には刑訴六〇条一項三号の事由が存続するものと認め、控訴裁判所のなした第二回の勾留期間更新決定を違法でないと判示して異議申立を棄却したことは、もとより適法というべきであつて、所論違憲の主張は前提を欠くものであり、論旨は理由がない。
よつて刑訴四三四条、四二六条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)